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英会話の利用方法

「やいやいやい、ここにおわす方をどなたと心得る!・恐れ多くも、国際企業ソニーの創業者で…(というのはもちろん冗談だが、それに近いことはかなり言い張った)」そのとき見送りに来ていたソニーハワイの社長と私の二人で、カウンターの向こうの日系人社員に対してあれこれと主張を繰り広げること数分の後、相手は「やれやれ」といった表情で、1回限り有効なラウンジの利用チケットを出してくれた。

教訓。 特に海外の場合、航空会社によってサービスは大きく違う。
経験に乏しい私は、その後何度か海外旅行や出張に出るまでそんなことさえ知らなかった。 日本の航空会社も自由競争の時代に突入した今ならそんなことも当たり前と思われるかもしれないが、なにしろ当時の国内線は各社ともほとんど横並びのサービス内容だったし、国際線のビジネスクラスに相当するスーパーシートの類さえなかったのだ。
自分一人で行く場合は我慢できても、誰かのお供でついて行く場合は周到な事前調査が必要だ。 旅行代理店も、単に料金の安さだけで決めるのではなく、細かなノウハウを持った信用のおける会社を選んだほうがいい。
さて、そのようなこともあったが、飛行機に乗ってしまうと私も気楽なものだった。 自分はIさん夫妻とは離れたビジネスクラスに座っているので、タダ酒でも飲んで寝ていればいい。
ただし、自分の座席番号を書いたメモを主人に渡しておく必要がある。 何か用があるときに、いつでも呼び出せるようにしておくためだ。

メモは紙切れに書いて渡すとなくしやすいので、ポストイットに書いて、前の座席の後ろにでも貼っておいた。 これはホテルでの滞在中も同じで、自分の部屋番号を書いたメモを、Iさんの部屋の枕元かどこかわかりやすい場所に貼っておく。
それから、Iさん夫妻と自分の部屋番号は、現地で世話をしてくれる駐在員にも忘れずに知らせておく。 つねに自分の所在を明らかにしておくのは、随員の心得でも基本中の基本だ。
飛行機から降りるときには、主人のカバンを持たなければならない。 飛行機のドアが開く前に、ファーストクラスの席までズカズカと入って行く。
これにはちょっとした勇気がいる。 米国の航空会社の場合は規則がうるさいせいか、乗務員に制止されることがある。
しかし、そんなことは意にも介さず、「私はあの人の秘書ですから」とか何とか言いながらそのまま入って行く。 これくらい無遠慮に振る舞わなければ、カバン持ちの仕事などやっていられない。
ニューヨークのジョン・F・K国際空港に降り立つと、ソナムのスタヨフが何人か出迎えに来ていた。 空港の施設内であっても必ずしも安全とは言えないアメリカのこと。
そこは現地のスタッフも慣れたもので、それぞれ手際よくIさん夫妻をリムジンに誘導すると同時に、私たち一行のスーツケースをてきぱきと運んでくれた。 ソナムのスタッフはみな親切だった。
Iさん夫妻への気遣いもさることながら、名誉会長秘書のKさんから「不慣れな英語屋の坊やがついて行くから、よろしくね」と頼まれていたこともあって、新米カバン持ちの私の世話をあれこれと焼いてくれた。 しかし、海外に不慣れなのんびり屋の私は、その後何度も現地の駐在員から「カバンやカメラは車道側に下げていてはダメ。

ひったくられるよ」などと注意された。 ニューヨークの郊外にあるソナムのオフィスでは、現地の社員を相手にしてIさんの来訪記念講演会が開催された。
Iさんお得意の幼児教育論を、例によって私が逐次通訳する。 必ずしも流暢な英語の話し于ではない私が、本場アメリカで英語の通訳にあたるのはとても恥ずかしかったが、これも自分の役目なので仕方がない。
もっとも、このころまでにはもう何度かIさんの通訳をやっていたので、私もある程度は慣れていた。 ソナムのアメリカ人スタッフもフムフムとうなずきながら聞いていたので、何とかわかってもらえたようだ。
アメリカへ!それにしても、ニューヨークのオフィスが当時のソニーの東京本社よりも立派だったのには驚いた。 さすがはアメリカだ。
話は逸れるが、アメリカ人の中には、ソニーがアメリカの会社だと信じている人が少なくないらしい。 アメリカから来た手紙の宛名に”SonyCorporationofAmerica。TokyoBranch”(ソニー・アメリカ株式会社東京支社御中)などと書いてあったのを何度か見かけたことがある。
それだけソニーが進んだ国際企業だったということだろう。 ニューヨークでIさんの買い物にお供したときのこと。
Iさんはふと、F・A・O・シュワルツという玩具店に立ち寄って、「このおもちゃ屋は大きいんだよ」と私に言った。 実はIさん自身、玩具の類が好きなようではあったが、もしかしたら孫のような年ごろの私にニューヨーク見物をさせようという心遣いがあったのかもしれない。
まだ幼かったころ、祖父に連れられて近所の駄菓子屋に行ったことを思い出して、ちょっとうれしくなってしまった。 ところでこの出張中、「カバン持ち」が仕事のはずの私が荷物を置き忘れたことが2度あった。
これでは随員としてまるで失格だ。 スーツケースには全部同じ色のリボンをつけて、移動のたびに必ず個数をチェックしていたが、気をつけていたのは大きなトランクの類だけで、途中で増えた荷物やブリラケースといった細かな物がチェックリストから抜けていたのだ。
カバンをひとつホテルに置き忘れた1度目は、ソナムの社員が車で取りに戻ってくれた。 幸いなことに飛行機はソニーの社有機だったので、出発時間は遅らせてもらえた。

「あ〜あ、これではカバン持ち失格だなあ。 東京に戻ったらクビかなあ…」カバンが届くのを待っている間、私がそうこぼしていると、体格のがっしりしたアメリカ人のパイロ″トが元気づけるようにこのようなことを言ってくれた。
「なあに、そんなことでクビにならないよ。 そんなにクヨクヨしなさんな」2度目。
こともあろうにロサンゼルスでの授賞式でIEEEからもらったばかりのトロフィーをハイヤーのトランクに忘れてきてしまった。 これは、その運転手からもらっておいた領収書のカードに自動車電話の番号が書いてあったので、すぐに電話をかけてホテルまで戻ってきてもらった。
いやはや、何とも恥ずかしい話だが、旅行中はえてしてこういうことがよく起きる(…少なくとも、私だけではないと思いたい)。 こういうミスを犯さないためには、途中で増えた荷物や小さなものまで含めて、すべてをチェックリストに記載することだ。
また、単に目印をつけるだけでなく、荷物に番号を振っておいて、何が足りないかがすぐにわかるようにしておくことも大切だろう。 私の場合、荷物の個数だけ頭の中でカウントしていたのが不十分だった。
人間の記憶力や注意力は、旅行中などには散漫になる。 「見ればすぐにわかる」ようなチェクリストを作っておくことがポイントだ。
前記のような失敗はあったものの、この出張は当初の目的からすると成功だった。 ロサンゼルスで行われたIEEEの授賞式では、Iさん自らが英語でス。
ビーチを行い、満場の聴衆から見事な喝采を受けたのである。

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